以前から父に暗に東大を勧められることが何度かありました。けれどその度に、親は上がある限り子どもにもっと高いところを要求して満足しないんだ、と反発していました。父が東大を勧めるのも、子ども自身を無視して一番を要求しているに違いないと思っていたのです。「うちに東大なんか無理やわ」わたしはちょっと投げやりに答えました。ところが父は、わたしの姉と弟を持ち出してこう言ったのです。「おれは行けると思う。お姉ちゃんは社交的で人とうまくコミュニケーションをとる能力が優れているし、弟は手先が器用でものを作る能力に優れている。おまえは勉強する能力が優れていると思っている」その言葉を聞いて、わたしはふっと反発する気持ちが消えました。父はただ東大を押し付けていたわけじゃなかったんだ、兄弟それぞれの個性を尊重してアドバイスしてくれていて、そのうえでわたしに東大を勧めてくれたんだ、と思い、今まで拒否していた父の言葉がすっと心に入ってきました。